この記事は、現在進行形実録連載【ゆるり。〇〇物件を買う。】シリーズです。
― シリーズ化企画。始動。―
この記事では、リースバック物件の購入を“進行中”の私が、実際の流れをリアルに記録しています。(4軒目)
「どんな手順?」「どんな気持ち?」そんな疑問を持つ方にとって、ひとつの参考になればと思っています。
不動産って、ちょっとずつ学びながら進めていけば、意外とゆるっとできるものかもしれません。
ふと目に留まった、ひとつの戸建て
物件を見つけたのは、いつものように不動産サイトをチェックしていた週末のこと。
「高松」「築古」「土地付き」「車庫あり」「価格は300万円以下」――そんな条件で探すのが、いつものルーティンでした。
でも、高松で2件目の戸建てを購入したあと、ふと思ったんです。
「同じ県に物件を増やし続けるのって、大丈夫だろうか?」
地政学的なリスク――たとえば、地震や津波。
もし一つの県に複数の物件を持っていたら、
万が一のときにすべての資産が一度にダメージを受けるかもしれない。
リスクを抑えながら、長く安定した投資をしていくためには、
エリアを分散させる必要がある。
そう考えた私は、物件探しの範囲を少しずつ広げていくことにしました。
高松だけではなく、岡山・兵庫・大阪にも目を向けてみる。
それが、のちに大きな出会いにつながるなんて、この時はまだ思ってもいなかったんです。
検索結果の中で、ひときわ目を引いたのが――神戸の一軒家。
価格は950万円。
正直、「ちょっと高いかな」と思いました。
でも、気になったのは価格じゃなくて、備考欄に書かれていた一文。
「リースバック物件。現在の所有者がそのまま入居予定です。」
……リースバック?
初めて聞いた言葉に、私は思わず検索を始めました。
“リースバックとは、物件を売却したあとも元の所有者がそのまま住み続ける契約形態”――
空室リスクはない。
購入後すぐに家賃収入が得られる。
それでいて、見知らぬ誰かではなく「今そこに暮らしている人」が住み続けるという、
これまでの「空き家再生」とはまったく違うタイプの物件。
そのとき、不思議な感覚がよぎったんです。
「これ、ただの物件じゃない気がする」
売主さんの事情を聞いて、これはただの物件じゃないと思った
気になる物件だったので、さっそく問い合わせをしてみました。
築年数や立地、間取りももちろん気にはなったけれど、
いちばん気になったのは――「なぜこの家を手放すのか?」という理由。
不動産投資では“なぜ売られるのか”を知ることが、とても大切です。
なぜなら、その背景にその家の“これまで”が詰まっているから。
仲介業者から聞かされた売却理由は、ちょっと衝撃的でした。
売主さんは事業ローンを組んでいて、これまできちんと返済も続けていた。
でも、銀行の担当者が変わったことをきっかけに、まさかの“貸しはがし”を受けたのだそうです。
「本当は、売りたくなかったんです」
その一言が、心に残りました。
売主さんご夫妻は、ともにフルタイム勤務。
お子さんたちはすでに独立されていて、ふたりで静かに暮らしているとのこと。
今回の売却後も、この家に住み続けることを希望されていました。
それが「リースバック」という方法につながったのです。
これまでの投資とは違う、と直感しました。
ただの“利回り”だけを見て買う物件ではない。
そこには、ご夫婦の“これからの10年”が詰まっていたからです。
「この家に、このご夫婦に、自分が“貸す”という選択をする」
そう思った瞬間、私はこの物件を、ただの「戸建て」ではなく、
“ひとつの物語”として受け止めるようになっていました。
買付申込書提出
話を聞いたその日の夜、夫婦で静かに話し合いました。
「どう思う?」
「悪くないと思うよ。家賃もしっかり入るし、条件も悪くない」
「でもリースバックって初めてだよね。不安もあるけど……やってみる価値はあるかも」
私たちは、何度も「無理はしない」をルールに進めてきました。
今回も例外ではありません。
価格は950万円。
家賃は87,000円。
10年の定期借家契約で、借主による買戻し権付き。
修繕はすべて借主負担で、家賃保証会社も利用予定。
家賃の入金リスクは限りなく低い。
そして、なにより――売主さんとの信頼関係があった。
これなら大丈夫。
そう思えたからこそ、私たちは「買付申込書」を提出しました。
2025年6月上旬のことです。
交渉の中では、買戻し価格の設定にもひと工夫を加えました。
当初は「契約終了後、110〜120%の間で買戻し」という記載でしたが、
あとで揉めたくないと思い、私は売主さんにこうお願いしました。
「買戻し価格は120%で固定にしましょう」
売主さんは快く同意してくださいました。
さらに、もし10年後に買戻しができなかった場合は――
家賃を89,000円に引き上げて、さらに5年の定期借家契約に更新する方向で検討しています。
これは、単なる不動産投資ではありません。
信頼を前提にした、長期的な関係のスタートでもあるんだと思っています。
だけど、そこから時間が止まった
申込書を提出したのは、6月の上旬。
書面上はすべて問題なし。
売主さんからも「この条件でOKです」と、正式に了承をもらいました。
「これで、あとは銀行の審査が通れば進むだけだね」
そう思っていた私たち。
でも、現実はそんなにすぐには進みませんでした。
――1週間、何も連絡なし。
――2週間、まだ「書類確認中」。
――1ヶ月が過ぎたころ、「審査に時間がかかっています」との一報。
……えっ、そんなに?
聞けば、銀行の担当者が交代になったタイミングだったとのこと。
売主さんが借りていた事業ローンの処理や、名義変更の細かい確認事項が多く、
手続きが止まってしまっていたらしい。
正直、もどかしい気持ちはありました。
「進まないな…」
「これ、本当に決まるのかな?」
不安になったこともありました。
でも、不思議と「やめよう」とは思わなかったんです。
「いまは、動かない時期」
「でも、それって考える時間でもあるんだよね」
夫婦でそんなふうに話しながら、静かに待つことにしました。
焦らず、でも前向きに。
信じて、じっくり見守ること。
物件だけじゃなく、自分たちの“姿勢”も育てていく。
そんな10年の始まりなのかもしれません。
まとめ
はじめて出会った「リースバック物件」。
ただの戸建てではなく、そこにある“人の暮らし”ごと引き受けるような、不思議な感覚。
価格、家賃、契約条件――
何度も見直して、夫婦で話し合って、そして出したひとつの答え。
「やってみよう。私たちらしいやり方で」
申込書を提出し、売主さんの同意も得た今、
あとは銀行の審査を待つだけ。
でも、“待つ時間”って、意外と悪くないものです。
焦らず、無理せず、だけどちゃんと向き合いながら、
この物件と、これからの10年を考えていきたい。